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人手不足解消の切り札?AIエージェントによって変わるDX推進の設計と課題

DX(デジタルトランスフォーメーション)の設計において、これまではRPAや生成AIの活用(チャットボットなど)の定型作業効率化が中心でした。しかし今年に入り、「AIエージェント」が台頭してきたことで、従来の業務プロセスやツール選定を前提としていたDXの設計を見直す動きが出てきています。

本記事では、DX推進担当の方が押さえておきたいAIエージェントの基本的な概念から導入に向けたアプローチについて解説します。

【この記事を読むとわかること】
・AIエージェントが従来の生成AIやRPAと何が違い、どのように業務自動化の可能性を広げているか
・AIエージェントの登場によって、企業のDX戦略や業務設計にどのような見直しが必要になるか
・導入にあたって直面する課題と、それを乗り越えるための実践的なアプローチ

AIエージェントとは?

従来の生成AIが、問いに答える“アシスタント”だったのに対し、AIエージェントは業務の目的を理解し、その達成に向けて自ら判断・実行する“自律型のデジタル人材”です。これにより、従来のツールでは難しかった業務横断的な連携や、非定型な判断業務の自動化が現実的になりつつあります。

具体的な利用シーンではどう変わるのか、出張申請のフローを例に見てみましょう。

<従来の自動化プロセスの一例>

従来の出張申請では、出張の予定が決まった後、社員が自ら申請フォームにアクセスし、日程・訪問先・目的などを手動で入力するのが一般的でした。

生成AIを活用すれば、メールやカレンダーに記載された情報をコピーして「訪問目的の文章を整える」「申請内容の文案を考える」といった部分的な支援は可能です。しかし、これらはあくまで人の操作や入力を前提とした“補助的な役割”に留まります。

<AIエージェントを使った一例>

一方でAIエージェントを活用すれば、社員が出張予定をカレンダーに追加した瞬間、エージェントによって自律的にタスクを動かし出すことが可能です。

実行シナリオ:

  • カレンダーに「7/10 ●●へ出張」と登録すると、AIエージェントが予定を検知し、出張申請の下書き作成を開始
  • 登録された訪問先や日程、交通手段候補をもとに、出張申請の内容を生成AIで整形
  • 不足情報があればチャットで社員に確認し、補完
  • 最終的に、申請書を社内システムにドラフト登録し、上長に通知まで送付

このように、AIエージェントは人が何かを頼む(プロンプトを入力する)前に自らタスクの起点にもなれるのです。AIエージェントによる自動化の対象は「作業」から「業務プロセス全体」へ、そして役割は「受動的な支援ツール」から「能動的な遂行役」へと広がりつつあります。

AIエージェントの特徴従来との差異
①複数のタスクの流れを組立て処理できるゴールに向けて必要な作業を整理し、順序立てて実行・完了まで進められる。人が手順を決め、各ツールを操作して進める必要があった。
②入力(プロンプト)に依存せずに実行できるカレンダー・システム通知などのイベントを検知して、エージェント自身が処理を開始。常に人の操作や入力が起点。能動的に動くことはできない。
③バラバラのツールをまたいで処理できる必要な情報を複数のシステムから集め、状況に応じて最適な手順やデータを選んで活用できる。API連携などは可能でも、判断や適応は人に依存。

DX戦略の再設計が求められる理由

なぜ、AIエージェントの台頭がDX戦略の再設計につながるのでしょうか。

これまでのDX戦略では、業務効率化の1パーツという立ち位置で、AIができない部分は他の技術やソリューションによって補うという設計が主流でした。

しかし、AIが担う部分が増えることによって、「業務そのものを再設計し、AIと共創する組織」へと変わりつつある。つまり、DXにおけるAIの存在が1つのパーツから、基盤へと変化していきます。

例えば、従業員の代わりにAIエージェントが情報収集・比較・報告まで担うようになると、「誰がどの業務をどの順序で進めるか」といったプロセス設計そのものが変わります。また、複数エージェントが協働して一つの業務を完了させる仕組みも出始めており、“人間を中心とした業務設計”から“AIと人の協調設計”へのシフトが必要になるためです。

どのタスクをどの順序で行うか、誰が関与し、どこにAIが介在するかを再設計することは、従来のプロセス最適化ではなくDXの設計図そのものの更新を意味します。

DX戦略再設計の考え方と進め方のポイント

こうした再設計は一足飛びに進むものではなく、現場レベルではさまざまな課題も顕在化します。

AIエージェントは高度な機能を持つ一方、業務への適合性や現場の理解が不可欠です。だからこそ、従来のように小さく始めて現場とすり合わせながら展開する手順が、リスクを抑えながら定着を図るうえで今後も有効と言えます。

一方、大きく変わる点は、先述した通りAIエージェントの特徴を見越した業務フローそのものが再設計対象になる点です。次の表で、再設計するにあたり考慮する項目/課題/対応策を整理しています。

項目課題対応策
導入検討現場との温度差、AIへの過度な期待業務横断的な構成を見越した上で、部分導入からスタート。PoC(検証)→成果を段階的に共有する。
業務フローへの適用属人的・非構造な業務への適用が困難従来の業務フローを分解・整理し、人間とAIの役割分担と責任範囲を明確にしておく。
(業務の標準化、テンプレート化)
要件定義IT部門と業務部門の分断による難航部門を横断する連携チームをつくり「業務観点」で要件を擦り合わせる。
セキュリティ・
ガバナンス
データ連携の不透明さによるセキュリティの懸念匿名化や通信範囲の制限など、安全に始められる構成から着手する。
意図しない自律実行を防ぐための権限・モニタリング・中断設計にも配慮する。
成果の評価定量的に何を評価すべきか不明作業時間の削減率・応答の品質・満足度など、定量KPIを先に定める。

このように、「技術の導入」だけでなく「業務構造・人の関与・評価の考え方」まで含めて設計することが、AIエージェントを活かすDXには不可欠です。

まとめ

AIエージェントの台頭により、業務自動化の範囲は大きく広がり、従来のDX戦略では捉えきれない領域にも踏み込めるようになってきました。

一方で、導入の現場では過度な期待や運用の属人化といった現実的な課題にも直面します。こうしたギャップを埋めるための、「小さく始めて着実に広げる」というアプローチと、業務・人・技術の観点を統合した設計視点がキーとなることは変わりません。

今後は、AIエージェントを“便利な道具”として扱うだけでなく、組織の中で役割を持つ“デジタルな協働者”としてどう位置づけていくかが問われてきます。DX戦略を本質的にアップデートするために、今こそ業務のあり方とその設計を見直すタイミングと言えるでしょう。

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